今回のテーマは「おみみのパン工房、静止画ルームツアー」。
前回の記事で菓子製造業許可の要件について解説したので、実際のわたしの工房ではどのようにしているかをのぞいていきましょう。

おみみのパン工房の概要
まずはわたしのパン工房の概要から。
- 2015年 菓子製造業許可取得
- 元農具小屋で建物はイナバ物置
- 場所は自宅から約2mの位置
- 電気、ガス、水道は未設置
- 床は土間で基礎工事されている
- 広さは5m×3m(約4.5坪)
- 一面は全面開口のシャッター
最初、本当になにもない農具小屋でした。最初保健所に図面を持って相談に行ったのですが、なにもわからなかったため真っ白なものを持っていきました(さぞかし驚いたことでしょう笑)

リフォーム後の図面がこちらになります。よかった、無事にパン工房になりましたね。

のちほど実際の画像と照らし合わせていくのですが、一旦はこの配置で菓子製造業許可は取得できました。
ここで菓子製造業許可の要件をおさらいしておきましょう。すべて解説すると長くなるので、重要な部分のみ挙げます。
- 住居と別の場所であること
- 床や壁は耐水性があり掃除しやすい材質
- 換気が行えて、虫の入らない構造にする
- 水栓は3つ用意し、蛇口はひねらないものを
- 成形する専用の場所があること
- 焼成後の商品を置く場所があること
- 梱包する専用の場所があること
- 食材は棚に保管し、ゴミ箱も蓋付きに
- 区切られた場所にトイレがある
では先ほどの図を使って、照らし合わせてみましょう。
住居と別の場所であること

- そもそも自宅横の物置であり、住居とは別の場所
- のちほど自宅との距離感も画像でお見せします
床や壁は耐水性があり掃除しやすい材質

- 床と壁は耐水性のある素材、腰壁には耐水性塗料を塗った
- 土間ではなく、部屋にするために一段高さをあげた
換気が行えて、虫の入らない構造にする

- オーブンの上部に換気扇を設置
- オーブン付近の壁はステンレスで覆い、耐火性もある
- 換気扇にはカバーをつけ、虫が入らないようにする
- 出入り口には蛇腹式の網戸、窓にも網戸を設置した
- シャッターは残したが、壁をつくり倉庫にした
水栓は3つ用意し、蛇口はひねらないものを
- 2層式シンク、手洗い用シンクの計3つの水栓がある
- 真ん中の水栓は給湯器と繋がっており、お湯が出る
- 2021年の法改正に伴い、水栓はすべてレバー式にした
成形する専用の場所があること

- パンの成形は作業机で行う
焼成後の商品を置く場所があること

- 焼成後のパンは長い棚の空きスペースに置く
梱包する専用の場所があること

- 梱包や作業は真ん中の大きい机で行う
食材は棚に保管し、ゴミ箱も蓋付きに

- 冷蔵庫は4人暮らし用サイズを用意(譲り受けた)
- 食材は長い棚もしくは作業机下の引き出しに保管
- ゴミ箱は蓋付きのもので毎回作業後に袋を交換
区切られた場所にトイレがある

- 自宅のトイレを許可の要件として申請
- トイレタンクと手洗いが分かれている
次の項目では画像とともに照らし合わせていきましょう。
菓子製造業許可要件との比較
では先ほどの項目を画像と照らし合わせていきましょう。
なお模様替え後となりますので、配置が変わっている部分があります。
特に許可要件には関わりませんので、気にせずみていってください。補足等も入れながら解説していきますね。
住居と別の場所であること
こちらがわたしのパン工房、イナバ物置の元農具小屋です。

上の方をみてもらうと建物と繋がっている管がありますよね。これは電気を自宅からもってきている管になります。
ということはこの左側の屋根は自宅。これで「住居と別の場所である」ことが確定しました。
そして距離感もなんとなくお分かりいただけるかと思います。

中をのぞいてみると…簡易的な棚がありますね。
床はコンクリートの土間。基礎工事はされているので、強風でも飛ばされることはありません。物置のサイズ感としては車を1台保管できるくらいです。
このつるっとなにもない空間をリフォームしていくことになります。
床や壁は耐水性があり掃除しやすい材質
ここで一度リフォームの項目をまとめておきます。
- 電気、ガス、水道の基礎工事
- 床や壁を新たに設置(断熱材)
- シャッター側の壁の設置
- 換気扇、耐火性の壁の設置
- エアコン設置スペース確保
- シンクを計3つ設置
- 作業用の机等の設置
- 食材保管用の棚の設置
費用として大きかったのは電気、ガス、水道の基礎工事。そしていわゆる「部屋」にするための基礎工事でした。
電気は先ほどの画像からわかる通り自宅から引っ張り、水道はこんな感じで設置。

ガスも自宅のキッチン裏からはるばる引っ張ってきました。

この工事をしているとき、「なかなか大事になったな」と思ったのも事実w 気を引き締めた瞬間だったように思います。
では様子をのぞいていきましょう。
最初は「物置から部屋」にする工程となります。シャッター部分は虫の侵入を防ぐために全面壁にしました。

床は出入り口の段差をなくすために数センチ底上げ。無垢の木で素足でも歩けるくらいの材質にしました。が、床には断熱材を入れていないため冬は極寒。しもやけができそうなくらい冷たかったので、スリッパは必須です。
物置はトタン1枚のため、壁には断熱材を入れました。それでもやはり物置は物置。夏は暑いし、冬は寒いです。
こうして部屋ができあがりました。

部屋のイメージは「工場」。当時ブルックリン的なテイストが流行っていたこともあり、かっこいい系の壁紙を選びました。
個人的にはめちゃめちゃお気に入りな空間になったのですが、グレーの壁紙は撮影時に茶色を吸収しようとがんばるため、パンの撮影には不向きな壁紙だったようです。
おかげで撮影時は窓の下でないと全然おいしそうにみえない。
唯一壁紙だけは白系でもよかったのではないかと思っています。でも気に入っているので、10年経った今もそのままです。
照明は会社などで使われる長いタイプに。
カバーは工場をモチーフにしたかったので、倉庫などで使われるかっこいいものにしました。
画像をみていただくと途中で壁が区切られていますよね。

これが腰壁です。壁紙の色に合わせて白系にしました。
耐水性の塗料を塗ってもらい、要件もクリアしております。
エアコンもありますね。こちらはパワー重視だと思ったので200Vのコンセントにしました。
換気が行えて、虫の入らない構造にする
次はオーブンまわり。

オーブンの上にあるのが換気扇です。オーブン近くの壁は火気を伴うため、普通の住居でも耐火性の素材ですよね。
わたしはこの素材をステンレスにしました。
少し費用は上がりましたが、ここがよくある白いものだったら全然この雰囲気はでないのでめっちゃここ気に入ってます。
換気扇についているカバーには使い捨てのものを使い、定期的に交換しています。
窓をよーくみると、網戸がついていることもわかりますね。
先ほどの基礎工事の段階ではただの窓でしたが、虫の侵入を防ぐために網戸を設置しました。

同じ理由で出入り口にも蛇腹式の網戸を設置。基本は網戸を閉めて、出入り口も閉めます。横には給湯器のスイッチもありますね。
水栓は3つ用意し、蛇口はひねらないものを
次は水回りにまいりましょう。

「手洗い用」「道具洗浄用」「食材洗い用」で3つの水栓が必要になります。
独立している一番左が手洗い用としての役割をしています。
真ん中の水栓は給湯器とつながっており、お湯も出ます。
申請時は左右の蛇口はひねるタイプでしたが、2021年に工房の許可更新があったため、そのタイミングでレバー式のものに変更しました。

オーブンは家庭用と業務用の中間くらいのものをチョイス。隣にはコンロを設置し、ベーグルなどを茹でるときに使います。
オーブン下の引き出しも収納にしているのですが、ここに食材を置くと熱がこもりそうなので、パンの型や消耗品の保管スペースとして利用しています。
成形する専用の場所があること
菓子製造業許可では個別基準として「作業区画されていること」があります。
- 成形専用の場所があること
- 焼成後の商品を置く場所があること
- 梱包や作業する場所があること
一気に紹介していきます。
こちらの机が作業机として使っているものになります。

許可取得前の予定では左右にある木製の机で成形を行う予定でした。しかし作業するためにひくシリコンマットが滑ってしまい、急遽変更。
実はこの作業台、最初はオーブンの台として用意したのですが……ガス栓の高さとちょうどかち合ってしまい、置けなかったのです。
同じものの5センチ低い作業台を用意し、たまたま空いたのがこの作業台でした。
下に引き出しがみえますが、こちらには常温保管可能な食材を入れています。小麦粉やナッツなどですね。
次は「焼成後の商品を置く場所」。こちらは長い棚の上を利用しています。

この棚の端には発酵器をおいていますが、残りのスペースは空きなのでここを利用することにしました。
網は長めのものを3枚準備。ちょうど3枚がハマる長さで、結構な量のパンが置けます。
もう一箇所は「梱包や作業のスペース」。

職人さんにつくってもらった大きい机を使っています。
以前は机の上にはなにも乗せていなかったのですが、コンクリと古い板を使って簡易的な棚を制作。
いい感じに引き出しを置けれたので、その中に袋やハンコ、マスキングテープなどよく使うものを入れるようにしています。
このときには設置していなかったのですが、現在は空いている右側のスペースには電子レンジがあります。ちなみに右の黒いやつは冷凍庫です。
許可の段階での図面と更新時の配置は変わっていたのですが、用途としては同じだったため更新時の審査も特に指摘されることなく終わりました。
食材は棚に保管し、ゴミ箱も蓋付きに
食材は基本的に扉や蓋のある場所に入れます。

例えば強力粉などの大物。網の下の扉、実は段がなく25kgの袋がそのまま入る大きさとなっています。なので小麦粉はこちらにすべて収納しています。

他の食材は作業台の下のこの引き出しの下2列(4箇所)に収まるように収納。

冷蔵の食材は大中小のタッパーを用意し、きもいほどぴっちりと冷蔵庫に収納しています。
これね、食材の残りの量がわかるのがポイント。
タッパーが小さくなる=在庫が減ってくる合図
例えばナッツなどはある程度使い切りたいので、タッパーが小さくなってきたら組み合わせたメニューを考えます。いろいろナッツのベーグルなどに変身するわけですね。
この場所がスッキリしているということは食材をロス最小限で使えている証拠なので、また次の食材を少し先まで考えて仕入れていきます。
冷蔵庫は実家で使われていなかったものを譲り受けました。

元はよくある真っ白な冷蔵庫。自分でマットな黒に塗り、汚れ加工っぽく茶色のペンキで装飾しました。なかなかお気に入りです。
ゴミ箱はここに写っていませんが、無印良品で売っている蓋付きのものを使っています。
区切られた場所にトイレがある
いよいよ最後の項目。トイレですね。
菓子製造業許可ではトイレの構造が意外なポイント。この許可自体が「製造する場所」のため、施設内にトイレがある必要はありません。
自宅横の物置であれば、自宅のトイレをこの厨房のトイレとして使うことができます。
このとき「トイレタンクと手洗いが分かれている」のがミソ。
もしトイレタンクに手洗いがひっついているタイプであれば許可年数は5年。トイレタンクと手洗いが別であれば許可年数は6年になるよといわれました。これは自治体により基準が異なりますので、あらかじめご了承ください。
で、我が家のトイレですよ。

ご覧いただくとわかる通り、立派に離れております。というわけで許可年数はMAXの6年をいただけることになりました。
以上、菓子製造業許可の要件に照らし合わせながらのわたしのパン工房のルームツアーでした。
用途に合わせて模様替えしてもヨシ
せっかくなのでわたしの工房の模様替えの様子もお話ししましょうか。
これまで大きな模様替えは2回。
模様替えを決断したきっかけは「はたらき方」を変えたことでした。
それぞれ解説していきますね。
菓子製造業許可取得時の配置(第1期)
工房の許可を取得したときの配置はこちら。

このときは2本の柱がメインのはたらき方でした。
- イベント出店
- パン教室
ちょうど半々くらいの活動量。
パン教室は主に別の場所を借りて行っていたのですが、自宅の工房を使ってやることも多かった時期。真ん中に机を配置していたのはこのためです。
息子の小学校入学前にパン教室はすべて終了。教室としての利用がなくなったので、模様替えを決行しました。
イベント出店メインの時期(第2期)
パン教室として使わなくなったため、真ん中に机を置く必要がなくなりました。
イベント出店メインとなるとここに机があるのは大変邪魔。というわけで机の配置をガッツリ変えました。それがこちら。

変更した配置は以下の通り。
- キレイにハマっていた長い棚を窓際に移動
- 真ん中にあった机をその位置に移動
- 長い棚と机の間に作業机を配置
これで工房の中心部が空きました。作業効率も大きくアップ。2.3年ほどこの配置でパンを焼きました。
収納を大幅に増やした第3期(現在)
第2期のタイミングでネットショップをはじめたのですが、収納場所が少なかったためちょっとした模様替えをする必要がありました。
こうして完成したのが現在の配置です。

図面としてみるとあまり変わっていないように思うのですが、収納場所が一気に増えました。
まずはオーブンの下。

これまでは別の収納ケースで区分けていたのですが、ぴっちりハマるようなサイズのものを購入。ここには熱の影響を受けないようなパンの型や消耗品を入れています。

作業棚はずっと道具の収納をしていたのですが、こちらもぴっちりハマる収納ケースを配置。上は道具を収納し、下2段は食材保管に使っています。

大きな机の下はネットショップで使うダンボール置き場。一部は工房内に置いておき、在庫自体はシャッター倉庫に保管しています。
「イベント出店+パン教室」から「イベント出店のみ」へ
「イベント出店のみ」から「ネットショップメイン」へ
はたらき方に合わせて配置を変えることで、作業効率は大幅アップします。
最初は許可取得で頭がいっぱいではありますが、許可を取得してからはぜひ使いやすいように配置を変えてみてください。
許可更新時の注意点等は別の記事で解説します。
今回のまとめ
今回のテーマは「パン工房の静止画ルームツアー」でした。
リフォームするにしても、条件はひとによりさまざま。
自宅の一室をリフォームするひともいれば、自宅のパントリーなどをリフォームされたひともいらっしゃいます。
わたしはたまたまツルツルななにもないイナバ物置からスタート。
イチからの構築になったのは、雰囲気をつくるのも楽でした。
ひとつの参考になれば幸いです。
次回は「菓子製造業許可取得ー実践編ー」です。