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パン屋運営

【食中毒事案から学ぶ】身の丈に合ったはたらき方をしよう

こんにちは。ぱんのおみみです。

先日こんなニュースがあったのをご存知ですか?

「イベントで販売されたマフィンから納豆のような臭いがした」

どゆこと?と思ったのですが、このあと大炎上し、大変なことに。詳細は後ほど解説するとして、今回は「身の丈に合った活動をしよう」というお話。

売上は大切、生活も大切。確かにお金は大切ですが、身の丈の範囲を超えた動きはいずれ自分の首を絞めることになります。

ここはひとつ落ち着いて、この一件から学んでいきましょう。

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イベント出店で何が起きた?

2023年11月中旬に開催されたイベントにて販売されたマフィン。

SNS上で「納豆みたいな臭いがする」「糸を引いている」などの投稿が相次ぎました。

瞬く間に拡散され、お店が弁明。腹痛など体調不良を訴える人が相次ぎ、食中毒が発生したとして謝罪し、自主回収を進めています。

お店のSNSの弁明がまたマズかった。

この弁明も一気に拡散され、誹謗中傷等が止まらない事態に。また無添加、砂糖は少なめを謳っていたためさらに炎上。製造方法や服装についても指摘されたからか全ての投稿を削除。その後、𝕏・Instagramともにアカウントが削除されています(すでに閉店したとのこと)。

食中毒発生事案ということで厚生労働省も動き出し、健康への危険度は最も高いCLASS1とされました。

厚生労働省はリコール食品を3つに分類しています。

厚生労働省:リコール食品基準

厚生労働省の資料に「シール不良等により腐敗・変敗した食品」と例がありますので、今回の事案はこちらに該当したと予想されます。

販売した総数は2日間で3009個

正直驚きました。3000個ですよ。

お店内部の様子が拡散されていたので見たのですが、おそらくわたしのパン工房と同じ大きさのオーブン。

マフィンって結構大きいですよね。

1つの天板に6個乗るとして、1回の焼き上げで18個。5日かけて焼いたとしたら1日600個。

ということはオーブンの回転数はゆうに30回を超えます。

…もっと時間がかかっていたのでは?とも思ったり(憶測ですけども)。

Yahoo!ニュースで製造者ご本人の取材記事を読みました。

利益はあまり出ないということをおっしゃっていましたね。

お菓子は特に原価率が高いです。インフレも重なるし、製造者のお店の場所を考えると本当にギリギリの中で営業していたのでしょう。

だからといって同情の余地はありませんが、飲食は厳しいという現実は知っておく必要があります。

ちなみに「返品はレターパックでお願いします」と謎の指定をしてしまったことも炎上していました。

「マフィンってレターパックに収まるのかな?」がまず頭に浮かびましたが、もう何をしても炎上します。

火に油を注ぐかのように返品窓口であるSNSアカウントを閉鎖したりともはや擁護出来る部分が見当たりません。

今後どのようになるのかは分かりませんが、菓子製造業許可で活動をする者として他人事ではありません。

わたしたち製造者も初心に返り、今一度基礎から見直していきましょう。

食中毒について再確認しよう

食中毒についての知識を振り返っておきましょう。

以前配布された食品衛生責任者再講習会の資料からの引用です。

人から人に感染するものについても飲食に起因して健康被害が発生すれば”食中毒”として扱います。

食中毒を分類すると6つに分けられます。

今回のマフィンがどの分類になるかは分かりませんが、細菌性が濃厚?と予想はしています。

食中毒で近年急増しているのはアニサキス。続いてカンピロバクター、ノロウイルスとのこと。

予防方法としては「清潔を保って製造する」「十分な加熱をし、適切な保存方法で保管する」になります。

今回に関してはそもそも製造日が5日前。しかも常温での保管。それ以前の問題ですね。

2023年の11月中旬といえば、ようやく涼しくなっていた頃。

今年暑かったですからね。ということはそこから5日をさかのぼると東京では最高気温25℃の日が続いていた時期。

クーラーは18℃をキープしていたのかもしれませんが、マフィンを5日間室温保管というのは無謀。

いや、そもそも5日前に焼いていることが大問題です。

それについては次の項目でお話しますね。

ときどきこんな質問をいただきます。

パン屋を目指している人

「自家製酵母の検査はしましたか?」

わたしのパンは極微量イーストのパンのため、自分で酵母を起こしたりはしていません。

個人的に自家製酵母の風味が苦手なのと、小麦粉の風味を活かしたい思いがあるから。

なので回答できないのは申し訳ないです。

都道府県ごとで異なるかと思いますが、わたしの住む県では「食品衛生センター」で年間を通して検査を受け付けているそうです。気になる方は一度管轄の保健所に相談してみましょう。

パン屋が考えておくこと

ここまでちょっと暗い話が続きました。

人によっては一緒に落ち込んでしまう人もいるだろうし、これから開業するのが怖くなる人もいるかもしれません。

そもそも今回の一件は「製造するのが早すぎた」ことが発端。

マフィンって卵を使うことが多いですよね?そうなると水分とは別で卵にも気を遣うことになります。加えて製造日からの時間が経っているというのは……もはやリスクの温床になるわけです。

焼き菓子の中でもクッキーなど水分を使わないものであれば、比較的長めの賞味期限をとることは出来ます。

ではパンはどう考えるといいのか。

もちろん個人差はありますが、わたしはイベント出店では基本的に当日に焼き上げを行います。

500個を焼いていったイベントもありますが、ベーグルなど一部のメニューのみ前日に焼き上げ、残りは全て当日夜中から焼き上げました。

イベント当日は0時起きや2時おき。パン屋あるあるですね。

賞味期限は翌日に設定をしています。

要は「焼ける個数を焼いていこうぜ」ってこと。

ニュースを聞いた時。

「3000個」と聞いて二度見しました。

1人運営ですよ。ありえない量。

大きなイベントはたくさん売れる見込みがあります。でも今回のような事態になると失った信頼は取り戻せません

焼ける限界の数はお店により違いますが、少なくともちいさなパン屋で何千個は無理。商品数を増やしたいなら焼き菓子など日持ちする商品を販売する方が懸命です。

もちろん製造日はなるべく近くにすることが原則ですが。

何にしてもパンは超のつくナマモノ。だからこそリピートしてもらえるものでもあります。

誠心誠意、焼き上げていきましょう。

身の丈に合ったはたらき方を

今回のニュースを聞いた時「個人店でこの規模の出店って…出店料の回収大変そう」とも思いました。

というのもわたしもイベント出店をしていた身。しかもイベント主催もしていました。

出店料の相場を知っているのです。

出店料は主催者側が決めることが出来ます。特別な基準は特にありませんが、会場を借りるのにかかる金額がベースにあり、広告宣伝費やイベント保険料等を考慮して決めます。

ママさん向けのイベントなら1000-3000円。中規模イベントなら5000円程度。商業施設を借りるようなポップアップ形式だと、出店料に加えて販売した商品につきパーセンテージが生じます。

今回のような大きな規模になると出店料だけで数万円。これに加えて駐車場代も無視出来ません。東京なら打ち止め料金もないため、駐車場代だけで数千円はいくでしょう。

出店料の数万円を回収し、かつお店の利益を残す。

物販だけでも利益を上げるのが大変なのに飲食店、ましてや個人経営のお店がこの規模のイベントに出店すること自体が正直無謀だと思うのです。

なのでわたしはこの規模のイベントには出店したことがありません。

『身の丈に合ったイベントに出店する』

これは自分の身を守る選択でもあります。

確かに大きなイベントでは宣伝効果も大きいですし、来場者も多いから普段より売れるかもしれません。でも……でもそこをグッと堪えないと今回のような取り返しのつかないことになります。

どうか欲は一旦横においていただき、ご自身のはたらき方を考えてみてください。

今回のまとめ

今回は「食中毒事案から学ぶ、身の丈にあった活動をしよう」ということで

最近ニュースになった事案と個人運営のお店のはたらき方について解説しました。

最後に内容をまとめておきましょう。

今回のニュースははじめ𝕏で知りました。

スタートは「納豆マフィン」、そのあと「デスマフィン」、さらに「レターパック」までトレンド入りし大炎上。

何事だ!?と思い詳細を確認したところ、個人経営の方のお店だというではないですか。

しかも菓子製造業許可での営業。

「これは他人事ではないぞ!」と思い、慌ててこの記事を書いています。

この影響で他のマフィン屋さんはもちろん、真面目に製造をしているお店にも風評被害が考えられます。実際にこの一件のあとのイベントでは売上が下がったお店もあるとのこと。

Instagram等でも注意書きをしているお店も見かけるようになりました。

パン屋さん、お菓子屋さんは特別な資格がなくても始められます。

裏を返せば「素人でも営業出来る」ということ。

そもそもお店を開いた時点でプロ意識がなくてはいけません。

「自分だけは大丈夫」と思わず、現実を受け止めて自分の活動に活かしていきましょう。

わたしももちろん改めて見直していきます。