今回は「冷凍でのパン販売」のお話。
すごーくよく聞かれます。
前回サンドイッチや軽食についてお話しました。
先に結論をお伝えします。
”現状の法律に基づいた”菓子製造業許可をもつ施設なら追加の許可は必要なく、パンを冷凍でも販売出来ます。
ポイントは「現状の」という部分。
いつもご覧いただいている方は薄々感ずるかもしれません。
そう。食品衛生法の法改正を挟んでいるかどうかがポイントのようです。
この記事ではこの辺りも含めてまとめていきます。
菓子製造業許可で提供できるもの
何度も紹介はしていますが、改めて「菓子製造業許可」について復習しましょう。
イベントなどでお菓子やパンを販売したい!と思っても高い壁になるのがこの「菓子製造業許可」です。
許可申請については別記事で解説しています。
2021年6月以前に許可をとった厨房と、2021年6月以降に許可をとった厨房では提供できるものが少し異なります。
わたしはタイミングよく更新が完了しており、最近はたまに菓子系のサンドイッチを販売しています。
一旦は「法改正を境にやれることが違う」ということを覚えておいてください。
冷凍食品に関する許可とは
次は「冷凍食品」についてまとめておきます。
以前から「”自治体に確認して”冷凍での発送をしている」とお話してきました。
冷凍食品に関する許可も実は存在するんです。
で、その許可も2021年の法改正により変更がありました。
現在冷凍食品の許可は3つに分けられています。
- 冷凍食品製造業の営業許可
- 複合型冷凍食品製造業の営業許可
- 冷凍、冷蔵倉庫業の届出
それぞれみていきましょう。
冷凍食品製造業の営業許可
一般的にそうざいに関する冷凍食品の製造になります。
煮物・焼き物・和え物・揚げ物などなど。
唐揚げとかお弁当に入れるよね。あれだよ!
その場合はこの冷凍食品製造業の許可が必要になります。
複合型冷凍食品製造業の営業許可
こちらは食肉処理業・菓子製造業・水産製品製造業・麺類製造業の許可。
お菓子やパンなどがここに含まれます。
食品衛生法の改正に伴い、「HACCPに基づく衛生管理の実施」を前提として遵守すれば菓子製造業許可の範囲内で動け、追加の許可は不要になりました。
追加の許可がいらないのは大きい!
冷凍、冷蔵倉庫業の届出
こちらは冷凍食品の販売だけを行う場合です。
こちらは「届出」が必要になります。
特に営業施設の設備や更新手続きはありません。
そのため営業許可が必要だった時代よりも冷凍食品の販売はしやすくなりました。
これは許可ではなく、届出だから簡単だね!
食品衛生法の法改正がポイント
さて。何度も出てきている「法改正」。
2021年の食品衛生法の改正に伴い、菓子製造業許可でも軽食や菓子系のサンドイッチも提供可能になったことは前の記事でお話しましたね。
2021年の食品衛生法の改正では以下の点が変わりました。
- 調理場内の手洗機は手洗後の手ゆびの再汚染を防止できる構造であること
- 営業許可業種の変更
- HACCPに基づく衛生管理の実施を行う
2つ目の「営業許可業種」に『複合型冷凍食品製造業』というものが新設されました。
先ほどの項目で出てきた”冷凍食品に関する許可”です。
これは「菓子製造業許可の範囲で冷凍での発送」に関わる許可。
つまりは『法改正により菓子製造業許可のみでもHACCPを遵守していれば冷凍での販売が出来る』ということになります。
ここで気になるのが、”法改正前”に許可を取得している工房の場合はどうなのかとのこと。
サンドイッチに関しては「法改正後に営業許可を更新した工房は適用」でした。
実際、わたしも言われました。
ということは「サンドイッチに関しては法改正前の許可はまだダメ」なんです。
再三「自治体に確認してくださいね」と伝えているのはそういうこと。
だから法改正前の営業許可の場合、おそらく…難しいのではないかと。
なので改めてお伝えしておきます。
『ご自身の管轄の保健所に一旦確認してみてください。』
これから工房を作る方は法改正後の許可になるので、管轄の保健所の許可範囲内で各種販売可能になります。
冷凍での販売の注意点は?
最後の項目では冷凍での販売の注意点についてまとめておきます。
注意点としてはこんな感じ。
それぞれ解説していきます。
冷凍する際のニオイ移りに注意
ご自宅の冷凍庫を想像してもらえると分かりやすいでしょう。
「冷凍庫特有のニオイ、しませんか?」
どうしてもニオイの強い食べ物と共存するとパンのような水分の多い食材はニオイが移ってしまいます。
対策としては「保存用袋に入れて冷凍する」。
工房では専用で冷凍庫を用意されますよね。
なのでよっぽどニオイは移らないかと思いますが、念には念を。
保冷袋を使って小分けしておくと配送のミスも防げます。
また記事にする予定です。
ベストな解凍方法を見つけておく
パンにも個性があります。
わたしの焼くパンは比較的もちもち食感です。
そのため解凍のベストは「裏に向けて600w30秒、表に向けて600w30秒」
もしくは自然解凍。
メロンパンだけはトースターも併用すると美味しい。
ついでにしっとりしたスコーンはちょっと短めのが個人的に好きです。
自分のパンの1番のファンは自分です。
だから初めて買うお客さんに向けてしっかり説明出来るといいでしょう。
わたしは普段ショップカードと一緒に食べ方のコツのフライヤーも同封しています。
そんな配慮があってもいいかもしれません。
冷凍に向いていない食材は使わない
冷凍は万能とはいえ、向いていない食材もやっぱりあります。
個人的にはレタスやキャベツですね。
水分が邪魔をするのと、解凍が難しい。
バターなど溶けやすいものは解凍の難易度がグッと増すので、販売する場合は説明書を入れておくほうが無難です。
かなりの食材は冷凍できます。
ぜひいろいろ試して幅を広げてみてください。
冷凍とはいえやっぱり新鮮さは大事
冷凍は長く保存できます。
2週間から1ヶ月は焼きたて食感を楽しんでもらえます。
が、やっぱり食べ物ですから新鮮さは大切です。
なので基本は「翌日発送する分をまとめて焼く」を意識しています。
そうなると結構スケジューリングが大変ですが、そこはもうね、慣れです。
焼き上げ時間の目標があればそれも考えたいし、冷凍庫の大きさによっても焼ける個数が変わります。
わたしが工夫していることとすれば期間限定メニューを2週間で変えること。
適度に目に留まるし、食材も入れ替え可能。
まとめて焼くにも種類が広がりすぎないです。
必ず一晩冷凍してから発送する
パンは品質保持のため、クロネコヤマトのクール冷凍便で配送を行います。
冷凍便の配送では「-15℃以下で12時間以上の冷凍をした状態」での配送準備が必要です。
一般的な冷凍庫は-18℃。
いつも冷蔵庫、冷凍庫ともに温度計を入れて管理していますが、やっぱり完全に冷凍されるまでは12時間以上かかります。
焦ってもいいことはないのでしっかり一晩冷凍するようにしましょう。
以上が注意点です。
いかにお客さん目線で考えられるか、が大切だと考えています。
今回のまとめ
今回は「パンを冷凍して販売することは出来るの?」に関して食品衛生法改正をポイントにしつつ、解説しました。
最後に内容をまとめておきましょう。
パン販売の大きな壁は「許可」。
設備を整えるにしても、場所を借りるにしてもやはり大きなお金が動きます。
営業を始めても出店だけではかなりの数をこなさないとなかなか利益を上げるのも難しいです。
お店を持っていたとしてもお客さんが来なければ苦しい。
持続可能なお店づくりはかなり大切です。
加えて物価の上昇。
正直わたしも自宅工房でなければ続けてないかもなと思います。
だからこそ現場の生の声をお伝えしたいとも考えています。
細々であれ、現役であることはアンテナを張るきっかけになります。
せっかく恵まれた環境にいるからこそ頑張っているお店のお役に立てたらとも思っています。