今回はよく聞かれる「パン屋さんの資格」のお話。
わたしはかつて”資格魔”でした。
当時はパン屋になりたくて資格魔になったわけではなく、何かをしていないと、何かを学んでないと怖かったのです。
思えば薬学検定1級や、ファイナンシャルプランナー3級、アロマコーディネーターなどなど分野を問わず勉強していました。
肩書きがないと怖い、
何か勉強していないと怖い、
資格がたくさんあれば怖くない。
こんな変な勘違いをしていました。
実はパン屋さんはなりたければ誰でも”なること”は可能です。
あとは自分というキャンバスにどう色を付けていくのか。
すごい資格を持っていても、ただ持っているだけでは宝の持ち腐れ。
資格があっても経験がなければそれも単なるお飾りになってしまいます。
今回は『パン屋さんになるには』という部分にフォーカスしてどんな資格があるのか、開業には何が必要なのかを解説していきます。
せっかく自分の時間と労力を差し出して勉強するならこのあと役に立つ資格を勉強したいですよね。
ぜひ参考にしてみてください。
パン屋さんになるには
改めてパン屋さんになるのに必要なものをまとめておきます。
- 営業許可を取得した工房
- 食品衛生責任者の資格
極論、この2つがあればパン屋を開業出来ます。
営業許可は2種類。
- カフェも経営したいのであれば「飲食店営業許可」
- 販売を主に考えているのであれば「菓子製造業許可」
2つの許可の違いは条件になります。
例えば飲食店営業許可はお客さんも使用出来るトイレが必要です。もちろん自宅ではなく、そのカフェに。
菓子製造業許可でもトイレは関係してきますが、この場合は製造者が使うお手洗いとなります。
だから自宅のトイレでオッケー。
許可の年数は最長6年までがありますが、トイレにある手洗いがトイレと引っ付いているかどうかも年数に関係してきます。
例えばわたしの例。
パン工房は自宅横にあるイナバの物置を改装。
着替えは基本的に自宅で行い、お手洗いも自宅で済ませます。
こちらは自宅のお手洗い。
手洗いは別で付けていたので許可年数は最長の6年を取得することが出来ました。
これがトイレに手洗いが引っ付いていると5年になったとのこと。
菓子製造業許可には許可の取得金額があるのですが、5年でも6年でも18000円。
数千円の違いにはなりますが、更新料も別で発生してくるため許可の年数は長い方がお得になります。
もし自宅を改装してパン工房にと考えているならトイレの手洗い場のことも頭に入れておくと良いでしょう。
話が逸れましたが、パン屋さんを開業するのに必要なのは
- 営業許可を取得した工房
- 食品衛生責任者の資格
菓子製造業許可であればパンやお菓子を販売することが出来ます。
そのパンやお菓子はイベントやネットでも販売することが出来ます。
時々法改正などで内容が変わっていることがあるので、毎年の食品衛生講習会での話をよく聞いておいてください。(ただし毎度ものすごい眠気に襲われますw)
パンに関する資格
例えば病院なら専門的なお仕事では医師免許や看護師免許が必要ですよね。
ではパン屋には専門的な資格は必要なのでしょうか?
先に結論を話してしまうと『必要ありません』。
どちらかといえば有名店で働いていた、とかフランスで修行していたなどの方がいわゆる”ブランド力“がつくかもしれません。
ただしいろんな民間資格があるように、パンに関する資格もいくつか存在します。
このうちパン製造技能士は国家資格。
とはいえパン屋さんを開く上で必ずなければいけないわけではありません。
資格を持ってますよと言うことは出来ます。
それぞれの資格についてまとめていきます。
パン製造技能士
パン製造技能士は都道府県職業能力開発協会が実施するパン製造に関する学科及び技能試験に合格したものを指します。
国家資格である技能検定制度の一種。
特級、1級、2級とあります。
特級は管理者または監督者が通常有すべきの程度、1級と2級もそれぞれのレベルに応じた内容となります。
受験するには実務経験が必要になり、試験は学科試験と実技試験があります。
パンコーディネーター
パンコーディネーターは「パンを食べる視点からパンに関する適切な助言・提案を行うことが出来るプロフェッショナル資格」として誕生。
公益財団法人 日本生涯学習協議会より監修・認定を受けています。
民間資格です。
アドバンス、エキスパート、コーディネーターと3つの資格制度があります。
どちらかといえば製造というよりも商品開発などに活かせる資格です。
上位資格は下位資格を取得後に受験できます。
パンシェルジュ検定
パンシェルジュとは「奥深いパンの世界を迷うことなく案内できる幅広い知識を持った人」という意味。
パンの製法や歴史、文化やマナーなど総合的にパンの知識を取得できる内容です。
パンシェルジュ検定も民間資格です。
1級から3級があり、上位資格は下位資格を取得後に受験できます。
ここまでパンに関する資格について解説してきました。
で、解説しておいてアレですが、わたしは特にこのような資格は取得していません。
むしろ資格を必要としないからパン屋になったのかもしれません。
というのもちょっとした資格へのコンプレックス持ちなのです。
「わたしは〇〇という資格があります!」というアピールが苦手だよw
だから個性を活かせるパン屋を無意識に選んだかもしれないですね。
まぁ後付けの理由ですけどw
「あの人の焼くパンを食べたい」
「あの食感のパンを食べたい」
「無性にあのパンが食べたくなる」
「冷凍庫にあのパンがいないと不安」
資格に頼ることなく、人の役に立てる。
なんだか必要とされている気がして嬉しかったことを今でも覚えています。
これは今こうやって発信しているのも同じで、誰かの役に立てることが好きだからやめられないのかもしれません。
確かにパン屋に資格は必要ありません。
でも知識として自分に入れることは全然アリ。
もっとパンを知りたい!と思ったらぜひ勉強してみてください。
パン屋開業に必要なもの
この項目では食品衛生責任者についてまとめていきます。
食品衛生責任者の資格取得
許可・届出の対象となる施設では原則として食品衛生責任者を設置する必要があります。
特に飲食に関する資格などを持っていない場合は3に当たるため、食品衛生責任者養成講習会を受講することになります。
特に講習が終わってからテストなどもありません。
受講料は6700円(内訳:受講料3740円・資材費:2960円)。
わたしの住んでいる自治体では朝の9:30-夕方5:00での開催。1日使います。
こちらもまた眠気との戦いになりますが、頑張りましょう。
工房の許可を取得する自治体か、お住まいの自治体で申し込みをします。
取得後は定期的に講習会を受講する
資格取得後、工房運営をしていく中で年に1度講習会を受ける必要があります。
それが「食品衛生責任者実務講習会」。
この講習会は食品衛生法に基づき、すでに食品衛生責任者として従事している人が食品衛生に関する新たな知見を取得するために年に1回、定期的に受講する講習会。
これまでは夏期講習として開催されていましたが、令和4年度から名称を変更して開催されています。
受講料は無料。時間としては2時間くらい。
持ち物は筆記用具、食品衛生手帳。
自治体により少しずつ内容が異なりますので、最終的にはお住まいの自治体の内容で理解を進めてください。
なお工房を取得してからは年に2回の検便もあります。
こちらは案内がきますので指定された日に提出をしてください。
結論:パン屋は誰でもなれる
まぁまぁ長めにお話をしてきましたが、結論パン屋さんは誰にでもなれます。
パン屋さんで働くために必要な資格はありません。
ただしパン屋さんを開業するには”必要になるもの“があります。
その敷居が高いというのがパン屋の唯一の壁。
さまざまな条件が必要になってきます。
この中で一番の壁になるのは工房を作ること。
わたしはたまたまその壁は少し低かった。
どちらかと言ったら子育てとのバランスの方が苦労したかもしれません。
でもその苦労した部分というのも実は「自分が探していたもの」を理解していなかっただけ。
本来は見ないといけない部分だったのに見ないふりをしていた部分でした。
数年かけて働き方を変えてきたことで”自分が探していたもの”を見つけた気もしました。
だから無駄なことは何もない。
パン屋になったのも何かの縁だったのかもね。
今回のまとめ
今回は「パン屋さんに資格は必要?」ということでパン屋になるために必要な資格、パンの資格について解説しました。
最後に内容をまとめておきましょう。
パンをもっと知りたいなら資格としての勉強をするのもありだし、パン教室をやっていたりするとちょっとした知識があると話のネタにもなります。
実際わたしもパン教室を主宰していましたが、「実はあんぱんなど具材が入ったパンは日本発祥なんですよ」など小話を入れると生徒さんから反応があったりします。
個人的には開業に必要のない資格は今のところ取得する予定はありません。
肩書きを全面に押し出して薄っぺらいと思われるより、「この人何者なの!?」の興味本位の方が面白いからw
現によく「いろんなことやってるよね」と言われてきました。
本人としては器用貧乏なのはあまり好ましくはないのですが、こうやって情報発信をしていると無駄に多い経験値が役に立ちますw。
今後は教室運営についてもお話出来たらと思います。
ぜひ参考にしてくださいね。