今回は「これからパン屋を開きたい」という方に向けて、5つのステップに分けて解説していきます。
パン屋さんは開業までのハードルが高いです。
それ以上に継続するのも大変です。
始めてから考えるのももちろんいいのですが、今のお仕事を手放して挑戦される方もいらっしゃいますよね。
そうなると今と比べてかなり状況は変化します。
始める前に情報収集はしっかりしておきましょう。
この記事では流れをざっくりとまとめつつ、パン屋を始めてからのあれこれもお伝えしていきます。
Step1:パンをたくさん焼く(パン屋体験)
まずは「たくさん焼こう!」です。
すでにパン作りが趣味の方もいますよね。
そういう方はぜひ“仕込み“を増やしてみてください。
一般的にパン生地というのは200−300gの強力粉で仕込みます。
焼き上がる数はおよそ6−8個。
はて。これでパン屋になれますでしょうか。
6個じゃあさすがに家族に配って終了です。
まずは倍の600gから仕込んでみましょう。
焼ける数は12個。
…とその前に「ホームベーカリーじゃ無理」かもしれません。
ならば、2回仕込みましょう。
焼くときも同じ状況になります。
2回焼いてみましょう。
すると“時間差“が出来ますよね。
やば!発酵しすぎた!
これはあるあるですので、ご安心くださいませ。
発酵の場所を変えてみたり、成形するタイミングをずらしてみたり、いろいろ試行錯誤してみましょう。
600g12個が焼けたら、次はその倍!
24個を目指してみましょう。
24個になるとまた世界が変わります。
お家での焼き上げだと大抵作業場所が足りません。
しかしなんとか場所は確保してください。
きっと片付ければなんとかなります。
こんな風にじわじわと数を増やしてパン屋さん体験してみます。
実はこの手法。
パンを独学で学び始めた当初やっておりました。
あまりにも作るのが楽しくて最大60個を一気に焼き上げたことがあります。
しかも息子をおんぶしながらw
今思えばぬるっとパンの業界に足を踏み入れたわたしにはいい経験だったのかも…
たくさん焼けるようになったら1つの生地の可能性を模索します。
毎回全ての生地を変えていたら間に合いません。
何種類かメインの生地のレパートリーを持っておいて、そこからどんどんメニューを広げるのが一般的。
例えば基礎の生地から
- あんぱん
- チョコぱん
- メロンぱん
が焼けるようになったら、数も調整できます。
ハード系はそれでまとめる。
惣菜系ならそれでまとめる。
混ぜ込み系はその都度考えるなどして“大量のパンを焼ける仕組み“を考えましょう。
もちろんこのタイミングで原価計算もしてみます。
この辺りから「楽しいな」とか「大変だな」とか感情が沸いてくると思います。
この段階で「やっぱいいかな…難しいな」と思ったら趣味に留める。
パン工房を作るにはお金がかかります。
職場体験のような環境は出来ませんが、“なったつもり体験“なら出来ますよね。
『パン屋を夢で終わらせない』ために今何をするべきか、タイミングはどうしようかなどは実際に動き出す前から考えていいと思います。
自分の夢ノートみたいなのを作ってみてくださいね。
またそんなお話もしますね。
Step2:工房取得のための準備をする
Step1では「パン屋さん体験」をオススメしました。
この項目では「パン屋さんになるための準備」。
準備といっても大小さまざま。
言わずもがな、場所とお金が鬼門になります。
- 自宅の一室を改装するのか
- 敷地内の倉庫を改装するのか
- 物件を借りて改装するのか
- 居抜き物件を借りるのか
4つ挙げただけでも全く状況が変わります。
初期費用がかからないのは“居抜き物件“。
代わりに毎月の家賃が発生します。
物件の改装となると水道などの工事が必要になります。
いかに家賃の重みがあるのかをよーく考えておいてください。
ざっくりした例になりますが、計算してみましょうか。
例えば250円のパンがあります。
原価は30%、消耗品や光熱費などで20%とします。
- 250円×30%=75円(原価)
- 250円×20%=50円(消耗品等)
- 250円-125円=125円(一旦の利益)
つまりパンを販売するのに半分の原価がかかります。
家賃を50000円としましょう。
残ったお金を全部家賃に回すとして50000円÷125円=400個。
そう。400個販売して、やっと家賃を賄えるんです。
これで計算を終わりにしてはいけません。
このままだと利益が全く出ませんよね。
しかも費用って家賃だけではありません。
利益を100000円出したいなら…めっちゃ焼くことになりますよね。
月に2000個販売するとして、週1の営業なら1日に500個。
1日500個を焼いたことがありますけど、1人だとヤバいです。
1日に200個で同じ利益を出すなら週2.3日の営業になりますよね。
そうなるとその分の光熱費がかかります。
…とまぁ、とりあえず伝えたいのは「家賃の威力は半端ない」ということ。
“主婦ベースでのんびり働く“なら自宅工房がベスト。
ただそんな簡単に条件が整うわけではありません。
1つの参考例として頭に入れておいてください。
ここまでは家賃のお話をしましたが、改装をするには“資金“が必要です。
次の記事で初期費用についてまとめますが、ざっと『車が買えちゃいます』と伝えておきます。
車が買えるくらいの資金を投入して、どのくらいのバックがあるのか。
自分はどう働きたいと思っているのか。
パン屋さんをやりたい!という情熱だけで突っ走ると、後々だーいぶ大変なことになってきます。
どうか、後先をある程度まで考えて先にお進みください。
個人的には“パン屋さんになりたい“という気持ちをすごくすごく応援したい立場ではあります。
でも、身体が壊れてしまっては本末転倒。
家族関係が悪くなってしまっても本末転倒。
なのでちょっと声を大きくして伝えております。
その条件をクリアできるのなら、あとは結構余裕です。
食品衛生責任者の資格は講習会受講で取得可能。
あとはパン工房の許可を取得すれば完了です。
Step3:パン工房を取得する
Step2が鬼門でしたね。
場所とお金がなんとかなれば、パン屋さんって誰でもなれます。
次のStep3では工房の取得がメイン。
工房を取得するにはどうするかというと、「菓子製造業許可の要件」を満たす工房にする必要があります。
ざっとまとめてしまうとこんな感じ。
もちろん電気、ガス、水道は必須要件。
トイレは自宅のトイレが使えれば5年の許可は取れます。
トイレ本体と手洗いが別であれば最長の6年も可能です。
この辺りは自治体によって基準が違うので工房を作る自治体に必ず確認しましょう。
わたしは改装前に図面を保健所に持っていき「これで工房作って許可は取れますか?」と聞きにいきました。
改装してから許可が取れなかったら悲しいですからね。
出来るなら事前に確認しておくと安心です。
改装したら必要な書類を提出し、保健所に審査に来てもらって工房の取得。
今はHACCPという衛生管理をする必要があります。
これについても記事にしていますのでご参考ください。
そのうちテンプレとか作れたらと思ってます。
いつになるか分かりませんけどw
工房取得が完了し、許可証が手元に届けば店舗での販売やイベントなどに出店することが出来ます。
2021年以降に許可を取得していればパンを冷凍して販売することも出来ます。
ここからはどんどん経験を積んでいきましょう。
Step4:イベント出店などで販売する
工房が取得できたら一安心…ではありますが、勝負はここからですよー。
売上を上げないと維持が出来ませんから。
というわけでパン屋さんとしての活動を始めていきましょう。
この辺りが主流になります。
個人的にオススメするのは「イベント出店」。
他のお店を観察しつつ、お客さんの反応を見てみましょう。
いきなり大きなイベントに出店は実は難しいです。
大きなイベントは公募制をとっていたりして審査みたいなものがあります。
そこでは他の出店経歴やディスプレイの雰囲気、SNSのフォロワー数などなかなかシビア。
イベント主催側にいたので選ぶ側の気持ちを知っているのですが、「出来たら割と有名どころに出店して欲しい」のが本音です。
集客のレベルが違いますからね。
なので最初は小さなイベントから。
地道にコツコツ名前を売っていくのです。
SNSも使っていきましょう。
X(旧Twitter)よりも断然Instagram。
理由は「写真があるから」。
パンのターゲットはやはり女性が多いです。
女性はね「キラキラ輝いているもの」が好きです。
おしゃれなディスプレイは吸い寄せられてくれます。
わたしはそれを勘違いして小物を増やしすぎたパン屋ですが、何事もほどほどに。小物も揃えるとお金かかりますんでw
イベント出店と並行してオススメしたいのが委託販売。
イベントは毎日開催されるものではありません。
なので知り合いで何かの集まりがあってパンを焼いて欲しいーとかそういうのがあればぜひ売り込んでみてください。
わたしもかつては幼稚園のバザーや子ども会のプレゼントとして納品をしていました。
予定さえあればお渡しして完了なので比較的受けやすいお仕事かなと思います。
さらに並行するならネットショップ。
こちらはイベントと重なると大変ですが、週末以外の時間を埋めてくれる強い味方です。
ただネットショップは軌道に乗るまでかなり時間がかかると思った方がいいでしょう。
動画でもなんでもそうですが、最初は誰も自分のことを知りません。
だから気づいてもらえない。
最初の1人になるって結構緊張するよね?
なのでネットショップは気長に気長に。
そんな感じでパンを販売できる場所を増やしていきましょう。
Step5:持続可能な働き方を模索する
ある程度活動出来る場所が定まってきたらあえて一度立ち止まってみましょう。
無理してませんか?
家族時間、取れていますか?
しっかり休めていますか?
お子さんが小さいうちから活動をしていると、どうしても行事や体調不良などで予定変更もあります。
わたしは小学校入学のタイミングでパン教室を卒業して、イベント出店に絞りました。
その後、イベント出店とイベント主催を並行。
さらにネットショップを同時進行。
この辺りでちょっと気持ちが疲れてしまいました。
コロナ禍に入ったこともあり、良い意味で休憩が出来たのは大きかったのですがイベント主催は自分には向いていないことを悟りました。
そのため2021年秋を最後にして出店と主催から卒業しています。
活動出来る場所を自分で調整出来るのはフリーランスの特権でもあります。
こんな感じで自分の働き方を変えながらやりたいことを模索していくのも楽しいですよ。
まずは自分自身の心身の健康を大切にしつつ、ときどき働き方を見直してもいいかなと思います。
今回のまとめ
今回は「パン屋になるための5ステップ」をまとめました。
わたしにとってお仕事はもちろん大切ですが、子育てはもっと大切なことと考えています。
いろんな働き方があっていいと思います。
今はネットショップをメインにしていますが、今後はコンテンツ作りに移行していきたいと考えています。
少しずつ比率を変えていき、パンをまた趣味まで戻していくことが目標です。
せっかくパン工房はあるので完全に0にするのはしばらく先ですが、少なくともずっと今のペースではないでしょう。
やりたいことはまだまだあります。
それを叶えるべく、時間を作っていければと。
子育ての話もよく共感してもらえるので少しずつそんなお話もしていきますね。